単純平均に基づいたパーツテンプレートの更新
以前、ビジョンシステムを用いて、パーツフィーダーを流れる部品(パーツ)の検査や姿勢制御を行う技術について記しました。
産業用ビジョンシステムのための高速かつ正確な物体の速度および回転の評価方法
という開発事例です。

流れていくパーツの模様は、同じパーツであっても異なるロットでは微妙に異なっている場合があります。そのため最初に流れるパーツで上手くチューニングしていても、徐々に正しい判定が出来なくなっていくことがあります。ここでは、パーツ姿勢を判定するための基準となるテンプレート画像を、流れていくパーツの模様の変化に追従するよう、動的に更新していく技術を紹介します。
まずこの技術の背景について整理してみましょう。流されるパーツは、同じ姿勢であっても模様が微妙に変化していき、安定高精度なテンプレートマッチングが徐々に出来なくなっていきます。この模様の変化にテンプレートが追随していくためには、動的にテンプレートを更新していく機能が必要です。パーツフィーダーが、基準となるテンプレート画像を自動的に適応させていきます。
今回、テンプレート画像を用意し、流されたパーツ2,000枚の動画像に対して、テンプレートマッチングを行います。それぞれマッチングされたパーツ画像の単純平均を用いて、当該テンプレートを動的に更新していきます。
パーツ画像とテンプレート画像がマッチするとは、次のようなことです。1枚のパーツ画像と複数のテンプレート画像との間で、それぞれの差の二乗平均(マッチ基準)を算出します。その中で最も小さい値(差)を取るものを、マッチされたテンプレート画像とします。
更新の方式には、そのタイミングによって、オフライン方式とオンライン方式があります。オフライン方式は、全部のパーツ画像を使ってまとめて更新するものです。一方、オンライン方式は、パーツ画像のフレームが届く毎に更新を行います。
オフライン方式の更新式は、

となります。ただし、 は s 番目のテンプレートで、
は s 番目のテンプレートにマッチされたパーツ画像です。
オンライン方式の更新式は、


となります。ただし、 は t 時刻にマッチされた s 番目のテンプレートで、
は t 時刻に s 番目のテンプレートにマッチされたパーツ画像、
は t 時刻の重み付けで平均毎に小さくなります。
更新反復についての違い
オフライン方式は全体の情報を使っているので、必ず以前のマッチ基準より良い結果へと更新されるため、反復が不要です。一方、オンライン方式はフレームの順番によって様々ですから、以前より悪い結果に更新してしまうことが起こるため、反復が必要です。
オフライン方式処理フロー
オンライン方式処理フロー

実装結果
まず更新前のテンプレート画像を示します。

次にオフライン方式による更新後のテンプレート画像を示します。

最後にオンライン方式による更新後のテンプレート画像を示します。decay = 0.9999 です。

実行時間はいずれも6秒弱(ODYSSEY-X86J4105を使用した場合)です。
オンラインの結果は、オフラインと比べて「即時性」を持っています。オフライン方式はバイアスが小さく、全体的にぼやけた結果が得られます。オンライン方式は、後になるほど結果への影響が大きくなるので、後のパーツの状態に偏って依存しているように見えます。
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