サーマルヘッドの良品検査

プリンター印字サンプルの画像情報から、サーマルヘッドの良品判定を行った事例です。

一般の目視検査では印刷結果に白いスジが生じているとNGと判断されますが、拡大してみると白黒の千鳥格子が並んでいます。そのため、ヘッドの走行方向の一部で濃度が薄くなると、黒い格子の幅が狭くなり、白いスジとして認識されてしまいます。

白いスジが出ているパターン               正常なパターン  

最終的には、格子の連結性に着眼し学習する方針が良好な学習結果に結びつくのですが、データの性質を改めて分析してみます。

まず元画像の境界線は曖昧で濃淡の判断が難しいという問題がありました。

横線の輝度値の変化

横線の輝度値の変化を見てみると、複雑に変化している輝度値はグレースケール画像から直接学習が困難である要因となっています。

また感熱紙を移動させながら一次元のヘッドを走らせて印字される画像は、空間情報と時間情報を含んだ形で、一次元に組み込まれています。不良ヘッドは走行方向(時間軸)に沿って軌跡を残します。

これら性質に注目し、様々な手法を試してみました。サーマルヘッドは画像の縦方向に濃淡を残すことと、不良が起こるのはヘッドの素子ごとに独立事象であることから、白スジ発生箇所と正常箇所の学習におけるSN比向上のため、短冊切りした印字サンプル画像の短冊切りを行いました。例えば、幅16ピクセル、間隔4ピクセルおきにオーバーラップさせた短冊型のデータセットです。

白スジ発生個所           正常な箇所

データの時系列変化を学習できるRNN(再帰的構造を持つニューラルネットワーク)を採用することで、こうした不良判別ができるようになりました。一般に使われるCNN (畳み込みニューラルネットワーク:Convolutional Neural Network) では、畳み込み算で画像の特徴を抽出します。縦と横の軸が同等に扱われるため、データの性質を反映しきれません。RNNであれば、データの時系列の変化を学習できます。時間軸と関連する白スジ発生箇所データの性質に合っており、精度の高い学習を達成することができました。

データの特徴を分析し、機械学習に適した形に加工することが求められた事例です。

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